フィリピンに住んでいる人々を悩ませる最大の問題、その1つが渋滞です。首都のマニラや観光地のセブを中心とし、フィリピンのいたる都市で渋滞が深刻化しており、一部の機関では渋滞が与える経済損失はフィリピン全土で年間1兆ペソ、1日80億円以上ともいわれています。

サイバーテックでは、ラボ契約によるソフトウェア開発などを自社のオフショア拠点で行っていますが、そのオフショア拠点があるセブでも渋滞問題は深刻で、約束のキャンセル理由に「渋滞がひどかったから」と聞くこともしばしば。
では、なぜそんなにも渋滞が深刻化してしまうのでしょうか。

  • 道路以外の交通手段(鉄道・電車等)がない
  • 高速道路がない
  • 道路補修、下水道工事などにより通行規制が頻繁且つ長期的に行われる
  • 中間層の増加により、自家用車保有者が増加
  • 一部の都市部のみ発展し、人口密度が高い
  • 4.や5.により道路使用者は増加するのに、道路の拡張は行われない
  • 信号がない(交通整理が行われない)
  • 乗り降り自由のジプニー(乗り合いバス)が大量に走行している
    (どこでも停車するため、細い道では車道を塞いでしまったり、幹線道路ではジプニーが1車線をほとんど占領してしまう)
  • 交通事故発生時、事故車が道路を塞いでいても、現場検証が終わるまでは事故車を移動させない

などが、交通渋滞の原因として挙げられます。

とくに致命的なのが「道路以外の交通手段(鉄道・電車等)がない」ことです。
フィリピンの首都マニラでは首都圏内を走行する電車と、マニラと地方都市を結ぶ電車が走行しています。乗車賃が、区間にもよりますが30円~50円程度と一般市民にも払いやすい金額なため、多くの人が電車を利用しています。しかし、現在のセブには電車は走っておらず、島と島を渡る場合には船便がある場合もありますが、セブ周辺での移動手段は道路を利用するほかありません。そして、ほぼ毎日が真夏日のため、近場でも徒歩で移動するにはなかなか大変です。そのため、多くの人が自家用車を使用したり、乗り合いバスやタクシーを利用し、あらゆる車で道路が占領されてしまいます。

しかし、そんなセブにも渋滞問題解決の兆しとなるニュースがありました。

〔セブ通信〕大統領、交通インフラの財源確保へ

フィリピンのドゥテルテ大統領は19日、セブ市の交通渋滞改善には通勤鉄道や高架高速道路の建設が必要との認識を示し、財源確保に努めることを約束した。インクワイラーなどが20日伝えた。

大統領は、セブは古い都市のため、交通インフラの拡張が困難と指摘。交通渋滞の緩和には大量輸送システムの構築が必要とし、マニラ首都圏の幹線道路エピファニオ・デロスサントス通り(エドサ通り)で検討しているような、通勤鉄道の敷設や高架高速道路の建設が「唯一の方策だ」と述べた。

その上で大統領は、建設に必要となる財源の確保を約束。自身の任期が終了する2年後までに関連プロジェクトを完了させたい考えを示した。

NNA ASIA アジア経済ニュース 2020/01/21記事より

実はこの発言、ドゥテルテ大統領が、過去のブログでも紹介したフィリピン最大のお祭り「シヌログ」のためにセブを訪れた際、セブのスポーツセンターでスピーチしたものです。もともとミンダナオ出身のドゥテルテ大統領は、このスピーチを英語でもタガログ語でもなく、地元言語のビサヤ語で行ったこともあり、会場にいたセブの人々はドゥテルテ大統領のマニフェストに大いに盛り上がりました。

近年、セブは急速に発展しており、各所で高層住宅や高層オフィスが建設され、BPOや飲食、観光サービスなどの分野で外資系企業も続々とセブに進出してきています。それに伴い人口の増加や物流の増加がある中で交通環境は進展せず、現在の交通事情がセブの経済および社会発展の妨げとなっていることは間違いありません。ドゥテルテ大統領の任期は2022年6月までと残り2年ほどですが、どうなるか楽しみですね。

参考
NNA ASIAアジア経済ニュース https://www.nna.jp/news/1997874
INQUIRER.NET https://newsinfo.inquirer.net/1215596/train-skyway-will-solve-cebu-citys-traffic-woes-duterte

(Emi)