「ITアウトソーシング・BPO」サービスでは、製造業のお客様が紙媒体による取説向けに作成したDTPデータを、構造化ドキュメントのデータ形式であるDITA(Darwin Information Typing Architecture)に移行するための支援サービスを行っている。製造業F社様では、過去に制作したInDesignの取説データ約1200ページ分のコンテンツをDITA1.2形式に移行する業務をサイバーテックに委託した。
背景
取説の制作現場で急速に広まるDTP→DITA化
自動車やパソコン、プリンタ、エレクトロニクス製品など消費者向け製品から、建機、工作機械、通信機器やソフトウエアなど企業向け製品まで、製品マニュアルや保守マニュアル制作を効率化する取り組みが急激に進展している。DITAは、マニュアルをはじめとする技術情報を効率良く制作・管理・配信・再利用するために策定されたXMLベースのアーキテクチャであり、製造業のマニュアル制作部門では、DITAを採用する企業が増加している。
ただし、DITAの導入には、InDesignやWordで制作された旧版のマニュアルをDITA化するという非常に手間のかかる作業を実施する必要があり、同社も大量の既存データをDITAに移行する必要が発生していた。
狙いと課題
DTPからDITAへの移行を、品質を落とさずに安価に行うには?
業務用設備機器を世界各国の市場に向けて製造販売サポートしている同社では、新機種の発売・仕様変更・仕向け先の追加などに合わせて、取説を都度改訂している。一方で機種増加と製品ライフサイクルの短縮に伴い、取説の改訂スケジュールが年々タイトになり、限られた人員とコストで対応できなくなったため、2015年から新規で作成する取説については制作方法をDTP(InDesign)からDITAに変更することを決定した。
一方、まだDITA化されていないDTPデータを改定する日々の業務と並行して既存のDTPデータをDITA化しなければならないため、制作部門の負担はさらに増加し、既存データのDITA化がなかなか進まない事が課題となっていた。
海外アウトソーシングサービス選択の理由
国内の制作会社より安価なオフショアを活用するという選択肢
同社とサイバーテックは今回が初取引であったが、サイバーテックからフィリピンのセブ島で実施する「ITアウトソーシング・BPO」サービスの説明を受け、以下の点に魅力を感じた。
- 現地フィリピンの制作窓口が日本人である事で、仕様や進捗に関する確認が日本語ででき、かつきめ細かなディレクション体制が確保できる事。
- 国内の制作会社や派遣サービスと比較して、コストが安い事。
- XMLやDITAに関するノウハウがあり、委託業務をスムーズに開始するための移行ルール策定や文書化に関するコンサルティングサービスも受けられる事
同社は、営業窓口であるサイバーテックの国内の担当者を通じて、DITAへの移行方法やチェック体制などについてヒアリングを行った上で見積もりを依頼、サイバーテックのセブITアウトソーシングセンターへ委託することを決定した。
委託した業務内容
InDesign/PDFデータをDITA1.2に移行、画像切り出し作業も。
同社が「ITアウトソーシング・BPO」サービスで委託した業務は以下の通り。
- 移行概要
-
- インプット:InDesignで作成された海外向けマニュアル4冊
- アウトプット:DITA1.2トピック、マップファイル、valファイル
- 期間:約4か月
- 移行ページ数:約2,000ページ
- 使用ツール:Adobe FrameMaker XML Author2015、DITA-OpenToolkit、AH-Formatter
- 課題管理:Backlog
- 移行作業の詳細
-
- お客様と同じ制作環境の構築:DITA編集エディタ、組版環境
- DITAトピックの作成:雛形のトピックファイルから新規作成または版数アップ
- 図版データの移行:InDesign内のepsファイルを指定形式で保存
- スペック表の移行:雛形を流用して表を作成、ID属性や単位の振替えを実施
- マップファイルの更新:追加削除時にはマップを更新
- DITA valファイルの更新:表示切替えのための設定ファイルのメンテナンス
同社の担当者は、初の海外オフショアを次のように振り返った。
「委託当初は、現地作業者が移行ルールや当社製品の仕様を理解するためのサポートに時間を費やさなければならなく、どの部分を依頼したらよいのかをコントロールするのは正直大変でした。しかし、作業者のノウハウが蓄積された後はスムーズに進み、納品されたDITAの品質も期待どおりでした。」
効果とその後の展開
第2フェーズでは移行生産性の向上とコミュニケーションの効率化を図る
同社では、まだDTPデータ形式のマニュアルが大量に残っており、引き続き今回の取り組みを繰り返すことによりDITAへの完全移行を実施する予定である。さらにフィリピンのオフショア拠点との間において生産性向上やコミュニケーションの改善を継続的に取り組んでいく事で、同社では前例のない「取説制作業務の海外アウトソース」の成功に向けて着実に進める計画である。