サイバーテックの「ITアウトソーシング・BPO」サービスでは、XML技術をベースに、DTPデータをWebサイトに再利用するための支援を行っている。出版社M社様では、自社の出版コンテンツの一部を会員向けのWebサイトに再利用する目的で、約100ページのDTPデータのXHTML化業務をサイバーテックに委託した。
背景
電子書籍化とWebサービスの流れが主流になった出版業界
医療関係の出版社であるM社は、自社コンテンツを紙の出版物だけでなく、電子書籍や自社のWebサイトに再利用する事で売り上げの拡大を目指していた。
従来は、紙の出版物をアドビ社のInDesignなどのDTPソフトウェアを使って制作(外注)しており、そのコンテンツを電子書籍化フォーマットであるEPUBやWebコンテンツ化する際には、同じプロセスで制作を外部の制作会社に委託していた。
しかし、このようなコンテンツの2次利用にかかるコストを安く抑える事ができないか、という課題を抱えていた。
狙いと課題
DTPデータをWebコンテンツや電子書籍に流用
同社は専門分野の書籍を数多く発行しているが、そのコンテンツの多くは委託先の制作会社が保有する組版専用システムの独自データかInDesignデータである。
一般的にこのような印刷用に製作されたデータは、制作会社もしくは印刷会社が保有しており、Webサイトや電子書籍への二次利用には、データ保有元に委託する必要がある。これは紙面制作時にデータによる納品を受けない契約になっている事が理由である。
しかし近年、出版社はWebマーケティングによる顧客基盤の強化と電子書籍ビジネスへの対応から、自社の出版コンテンツを自由に二次利用する事が必須となっている。同社もこのような流れの中で紙の出版物の多くが電子書籍化されているが、制作会社側のWeb/電子書籍制作ノウハウ不足と制作価格の高騰が大きなが課題となっていた。
海外アウトソーシングサービス選択の理由
XML技術をベースとする豊富なWebサイト制作技術と、日本人窓口によるきめ細かな対応がカギ
同社とサイバーテックは今回が初取引であったが、サイバーテックから、フィリピン セブ島にある自社オフショア拠点を活用したITアウトソーシング・デジタルBPOの説明を受け、以下の点に魅力を感じた。
- 現地フィリピンの制作窓口が100%日本人保証である事で、書籍制作に必要なきめ細かなディレクション体制が確保できた事。
- InDesignなどのDTP技術と、HTML・XML・CSS・JavaScript等のWeb技術の両方に精通していた事。
- 出版社における同様のデータ制作実績が豊富にあり、かつリーズナブルな価格であった事。
同社は、営業窓口であるサイバーテックの国内の担当者を通じて、制作完了やチェック体制などについてヒアリングを行った上で見積もりを依頼した。
既存の印刷会社と比較し、DTPとWebの両方を熟知しているがゆえの技術力や、オフショアだからこその安価な費用であるにもかかわらず、100%日本人窓口による、国内の制作会社と同等の柔軟な対応が可能であることから、サイバーテックが提供する「ITアウトソーシング・BPO」サービスにて実施する事に決定した。
委託した業務内容
InDesignデータをXHTMLデータに変換、画像切り出し作業も。
当初は、セブITアウトソーシングセンター側がテスト環境の使用ルールや細かな制作方法の習得まで多少時間がかかったが、制作が進むにつれて次第に制作ペースと品質が安定した。特に画像の切り出しルールや印刷データに含まれる空白文字の扱いなどの例外的なルールに関しては、アウトソーシングセンターが積極的にお客様に質問や指摘を行った事で制作の手戻りをなくし、約2週間で予定通り納品する事が出来た。
同社の担当者は、初の海外オフショアを次のように振り返った。
「最初は初の海外ということで不安がありましたが、全く滞ることなく、国内の業者とのやり取りと同等以上のコミュニケーションを取ることができました。」
さらに、当初抱いていた不安点についてもこう語って頂いた「外国人の方が制作する際には日本語のコピペミスや改行の見落としが予想されていましたが、ここはセブの現地日本人チェックグループの方がきちんと品質管理を実施して頂けたので安心でした。」
「ITアウトソーシング・BPO」効果とその後の展開
広がる電子書籍フォーマットEPUB。DTP→電子書籍化のワークフロー確立へ
同社では、今後はWebサイト制作だけでなく電子書籍(EPUB)への展開を本格化する予定である。このためには出版社側と制作者側が協力して、DTPデータからEPUB化するためのワークフローを導入しなければいけない。
今後は、海外アウトソースを活用し制作コストダウンを図りながらも、サイバーテックが保有するXML・HTML・EPUB等のドキュメント技術を生かして、DTPデータから電子書籍化のワークフローを確立していく事が期待されている。