フィリピン・セブ島大型スーパー台風「オデット(台風22号)」直撃直後の被害状況

2021年12月16日の夜に、大型スーパー台風がフィリピンの中部に上陸しました。
フィリピン名:オデットとよばれるこの台風22号の規模は、中心気圧915ヘクトパスカル、最大瞬間風速75メートルで、中心から全域220キロ以内は、風速25メートル以上の暴風域、北東側440キロ、南西側280キロ以内は、風速15メートル以上の強風域と記録されています。
時期が悪く、日本では残念ながらあまり報道されていないようですが、本当に大きな台風被害に遭いました。

この規模の台風は、2013年のヨランダ台風以来です。
その時は主にセブ島の北にあるレイテ島をかすめる進路で、セブ島は今回程の被害は出ませんでした。しかし今回のオデット(台風22号)はちょうどフィリピンの中部、特にビサヤ地区の真上を通過する進路でセブ島も広範囲にわたって甚大な被害を受けました。

セブに長年住んでいる方も、今回のように命にかかわるような台風は今までになかったとおっしゃっています。それだけ台風の多いフィリピンの中でも、セブ島は台風の直撃が少ない土地柄なんです。ただ今回の台風では、そこまで大きな被害はないだろうという油断が、被害拡大の原因になってしまいました。

台風が通過した翌朝、外に出ると前日とは打って変わって別世界のような光景が広がっていました。いたるところで屋根のトタンが飛ばされ、電線に引っかかって今にも落ちてきそうになっているところもありました。私の家の周りでは1トンはあろうかと思われる大きなゲートの扉が隣の家に突き刺さっていたり、道路には大きな木が倒れ、電柱が根元から折れて道路を塞いでいたり、どこからか飛ばされてきたゴミや建物のガラスが割れた破片が道路に散乱しているなど被害は想像以上でした。

台風「オデット」被害の写真(崩れた家)
台風「オデット」被害の写真(電線に引っかかっている様子)

車での移動がしにくかったのでバイクに乗ってあたりの被害を見て回りました。
一部渋滞が起きていて、渋滞の先にはガソリンスタンドがあり人々がガソリンを買い求めていました。

サイバーテックのセブオフィスがあるセブ市街でもコンドミニアム(高層マンション)やオフィスビル、ショッピングモールのガラスが割れたり、天井が落ちたり建物の被害も多く見受けられました。

台風「オデット」被害の写真(ガラスが散乱している店先)
台風「オデット」被害の写真(天井が落ちている様子)

その中でも特に被害が酷いと感じたのは、セブ島から橋を渡った、空港のあるマクタン島のリゾートエリアです。海岸沿いのこのエリアは大きなリゾートホテルが立ち並び、いつもは海外からのたくさんの観光客でにぎわっていますが、ホテルの外観を彩っていたきれいな木々が倒れ、海岸の白砂も無くなり辺り一面茶色に変わってしまって、あの南国のイメージが見る影もありませんでした。

次に、食料の備蓄が不安になりスーパーマーケットを訪れましたが、どこの店も閉まっていて何も買えませんでした。かろうじて空いていたコンビ二やドラッグストアでは、たくさんの人が列を作り、非常食や飲料水を買うこともままならない状態です。

電力、水道、ガスなどのライフラインは供給を停止していて、通信状況も不安定で外部との連絡も取れない状態なので、デリバリーももちろん頼めません。

以上が被災直後のセブの状況です。

スーパー台風「オデット(台風22号)」直撃から1か月後の復旧状況。

大きな被害を受けたスーパー台風「オデット(台風22号)」直撃から1か月が経過して、寸断されていたライフラインもだいぶ復旧してきました

セブ島エリアでは、台風直撃の10日目から徐々に復旧し始め、今では水道も電気も大体のエリアで復旧しています。ITパークやモールもオープンしていますし、水や食料、ガソリンも並ぶことなく以前と変わらずに購入できるようになりました。ただ、通信回線はまだ通じないところもあるようで、Wi-Fiを使うために外出するということも特定のエリアでは未だにあるようです。

マクタン島は全体的に遅れていて、電気や水道もまだ復旧していないところがたくさんあります。特に電線の被害が非常に多く、いたるところで電柱が倒れ電線が垂れ下がっているため、この電線に感電して亡くなってしまった人もいるそうです。電力会社の作業員が必死に修復作業していますが、完全復旧に3月から4月までかかるといわれています。

水道はまだまだ完全ではありませんが、もともと井戸水を使っている家庭がたくさんあるので、近所の方と井戸水を共有するなど、皆さん何とか工夫して生活用水は確保できているようです。しかしフィリピンの場合、飲料水は水道の水を直接飲めないので別に確保しなくてはなりません。災害前に備蓄していた飲料水もここまで大きな被害を受けることは想定しておらず、底を突く家庭がほとんどで、たくさんのボランティア団体が水の配給をしている姿が見受けられました。最近やっと水の販売も通常に戻り、安定的に供給されているようです。

食料品について

災害直後はお店に並んで何とか食料を確保していましたが、今ではスーパーマーケットなど市場は通常営業に戻っているので、食料の調達には困らなくなりました。

建物の復旧状況について

補修用の建築資材の高騰で修理ができないというところがまだまだ見受けられます。
ただでさえコロナで物流が満足でない状況で資材が高騰しており、そこからさらに値上がりしてとても買えないほどでした(通常の3倍から5倍)。
その為、台風の被害のまま修理がされずに放置されている建物がまだまだたくさんあります。

まとめ

台風の被害を受けて様々な苦労がありましたが、徐々にセブ島の日常が取り戻されてきています。現地の人々も少しずつ元の生活に戻り、笑みがこぼれるようになってきました。
屋根や電気がなくて外で過ごさなくてはいけない状況だったり、金銭的な問題、中には健康面での問題を抱えながらも、本来のフィリピン人の明るい国民性もあってか、日々元気に暮らしている人々を見ると感心させられます。

(KOIZUMI)