フィリピンのアウトソーシングの歴史

フィリピンではアウトソーシング産業が盛んであり、著しい経済成長を支える柱となっています。現地の人たちにとってもBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という言葉は認知度が高くフィリピンにおけるアウトソーシング産業の重要性を垣間見ることができます。

今でこそBPOは成長著しいフィリピンの経済を支える産業となっていますが、2000年代に入るまでフィリピンのBPOはそれほど注目されていませんでした。90年代まではBPOといえばインド、中国、ベトナムが主流で、特にインドは、アメリカやイギリスの企業がBPOを展開したことで発展していきました。インドはITに強く公用語は英語。加えて、アメリカのIT産業の中心地であるシリコンバレーとの時差が12時間であることから、24時間体制で業務を進めることが可能になります。そのため、90年代まで、世界のBPOの主役はインドでした。

2000年代に入ると、フィリピン政府はBPOを国内の基盤産業と位置づけました。BPOの中でも特にコールセンターやカスタマーセンターの分野で成長が目覚ましく、2010年にはついにインドを抜き、外資系コールセンターの数が世界一位になりました。フィリピンの人口増加は今後さらに加速していく見通しのため、労働人口がさらに増え、フィリピンのアウトソーシング産業は成長していくことでしょう。

フィリピン人の英語力を活かしたアウトソーシング事業

フィリピンはインドと同様に英語が公用語です。また、インド人は過去に植民地だったこともありイギリス訛りの英語を話しますが、フィリピン人は流暢なアメリカ英語を話します。コールセンターの業務や国外の会社とのやり取りも問題なくこなすことができるため、訛りの無い英語はBPO産業において大きな武器となりました。

また、他の国に比べて労働力が安価であり、日本の10分の1ほどの給料で労働者を雇用することができます。安価な労働力とはいえ、外資系企業の給与水準はフィリピンの現地企業の給与に比べ高い傾向にあります。物価の安いフィリピンでは、外資系企業の給与水準であればかなり豊かな生活を送ることができるのです。

企業側からすると英語が堪能な人材を安く確保でき、フィリピン側は雇用の確保と平均よりも高い給与を得られることから、フィリピンにおけるBPO産業は今後さらに成長していくと予想されています。

コールセンター

フィリピンにおけるアウトソーシング産業の中心は、コールセンター事業です。欧米企業を中心に、様々な国の企業がフィリピンに拠点を構えており、安価な人件費と高い英語力で、フィリピンはコールセンター事業のアウトソーシング先として不動の地位を確立しています。現在フィリピンは、コールセンターの数が世界で最も多い国であり、約70万人のフィリピン人が働いています。

ITオフショア

日本のIT業界は常に人材が不足していると言われていますが、フィリピンには若いIT技術者が沢山います。2014年にフィリピンの人口が1億人を超え、国民の平均年齢は24歳で日本の平均より20歳以上も若いです。未だ発展段階であるフィリピンのIT産業には意欲的な若者が多いため、優秀な人材を低コストで確保しやすい産業です。

アニメ制作

実はフィリピンは、日本のアニメ制作会社のアウトソーシング先として、長い歴史があります。フィリピンのBPOの柱であるコールセンター事業が盛んになる以前の80年代から、東映アニメーションがフィリピンの拠点でアニメ制作を行っており、背景、着色などの工程の約7割をフィリピンで行っているそうです。日本で馴染みの深いアニメが、実はフィリピンで作られていたと聞くと驚く人も多いのではないでしょうか。東映アニメーションの代表作である、ワンピース、スラムダンク、ドラゴンボールなどもフィリピン人が制作を支えていたそうですよ。

(Iwabuchi)