フィリピンには、運営コストの低さや人材の豊富さ、将来性などから多くの日系企業が進出しており、現地の雇用に大きく貢献しています。雇用された現地従業員の勤務先は製造業や印刷関係の工場で働いたり、日系レストランで働いたり、日本からのアウトソースを請け負っているBPO企業のオフィス内で働いたりと、業種や職種はさまざまですが、どの日系企業でも日本人と現地従業員とのコミュニケーションが必要な場面があります。そして、そのほとんどの場合、双方のコミュニケーション言語として英語が用いられます。

フィリピンの公用語はタガログ語と英語のため、国民のほとんどがタガログ語と英語を理解します。しかし、7000以上の島々を国土とするフィリピンでは、100以上の現地語が存在するといわれており、タガログ語と英語を母語としない国民も多くいます。

実はオフショア地として有名なセブも、現地の人同士は英語ではなく、タガログ語でもなく、現地の母語であるビサヤ語を話します。当社サイバーテックのITアウトソーシングセンターでは、数十名のフィリピン人が働いています。出身地はセブ島であったり、少し離れたミンダナオ島であったりと、セブ島以外の場所で生まれ育った人も多いのですが、全員ビサヤ州(日本でいう東北、関東、関西の括りのようなもの)出身のため、母語はビサヤ語です。そのため、社内でスタッフ同士が話す場合にはビサヤ語にてコミュニケーションをとります。クライアントや日本の本社などへの日本人同士のやりとりには日本語、ローカルスタッフと現地日本人スタッフとのやりとりには英語、ローカルスタッフ同士はビサヤ語が使用されるため、オフィス内では常時日本語、英語、ビサヤ語の3か国語が飛び交うことになりますね。

以前当ブログにて紹介した通り、ローカルスタッフは大卒者が前提であり、ITはもちろん一般教養も重視するため、スタッフの英語力は読み書きも会話も全く問題がありません。しかし、やはり母語であるビサヤ語のほうが心地よくコミュニケーションがとれ、特にビサヤ語を話す人々は自分の言語に誇りを持っているため、ビサヤ語を話せる外国人をみるととても喜んでくれます。全ての会話をビサヤ語でするとなるとかなり難易度が高くなってしまいますが、ちょっとした単語や表現をビサヤ語で言うだけでも、印象が良くなったり、円滑なコミュニケーションのきっかけにもなります。また、実はビサヤ語の中には、英語ではなかなか表現しづらいが、日本人でも使い勝手が良い表現もいくつかあります。なので、今日はみなさんにぜひ使ってみてほしいビサヤ語を紹介したいと思います。

1. Palihug(パリホ)

英語で言う“Please”と同じ意味です。もちろんメールやチャットなどの書き言葉で“Please”の代わりに使ってもいいですし、スタッフに何かを依頼、または指示を出した最後に「じゃ、よろしくね」というニュアンスで“Palihug”と最後に言うこともできます。日本人がよく使う「それじゃ後はよろしくね」は英語だと“Thank you”となる場合が多いですが、ビサヤ語では立ち去る前の“Palihug”がまさにそのニュアンスになります。

2. ~nalng(ナラン)

語尾につける表現で、言い回しを柔らかくしたり、軽い感じにする働きがあります。例えば誰かに「あなたがやって」と言いたい場合、英語では“can you do it? ”や“I want you to do it”などの言い方がありますが、“nalng”を使って“you nalng”というと「あなたがやろっか」「あなたでお願い」と柔らかい印象になります。「later nalng(後でやって)」「tomorrow nalng (明日にしましょう)」といろいろ便利で、使い勝手がいい表現です。

3. Kapoy(カポイ)

「疲れた」「面倒くさい」「だるい」などの意味があり、ネガティブな意味ではありますが、日本人が「あー疲れたっ」というのと同様、フィリピン人もこの“Kapoy”をよく使います。また日本人が“Kapoy”というと、勤勉でまじめと有名な日本人が言うからなのか、だいたい笑われます。

4. diba?(ディバ)

日本語で言う「~でしょ?」「~だよね?」と同じ意味です。例えば「もうそこは修正してくれたんだよね?」というとき、“You’ve already fixed it, diba? ”と文の最後の“diba? ”とつけるだけで、「そうだよね?」と確認の意を含むことができます。
「あなたは明日お休みだったよね?」=“You will be absent tomorrow, diba? ”
「私がこの部分を変更してもいいんだよね?」=“i can change this, diba? ”
など、英語との組み合わせでも問題なく使える便利な一語です。また、「うんうん、そうでしょう」と肯定するときにも“diba”だけで使用できます。例えば、「これ、あなたが言っていた通り難しい問題ですね」と相手から言われたら、“diba”というだけで「そうでしょう、言った通りでしょう」という意味になります。

5. 最後に相手の名前をつける

また、単語ではありませんが、フィリピンの人は会話の最後に必ずと言っていいほど相手の名前をつけます。“I will do it, Ken”や“Okay, Ken”“Excuse me, Ken”など、特にメールやチャットなどライティング型のコミュニケーションの際に相手の名前を最後につけることが多くみられます。これには日本語でいう「です、ます」や「~だね」といった語尾と同じような役割で、丁寧さをだしたり、親しみやすさをだすことができます。例えば、「いつまでに終わりますか?」とローカルスタッフに聞いた際に、“Tomorrow”だけだとそっけない感じがしてしまいますが、彼らは必ず“Tomorrow, Ken”と返してきます。なので、できればこちらも会話の最後に相手の名前をつけてあげるとより親近感のある会話をすることができます。YesかNoで完結する質問にも、YesやNoだけだと冷たい感じがしてしまうため、“Yes, Maria”や“I don’t know, Mike”など、相手の名前を最後につけてみると温かみがでます。

以上、フィリピン人スタッフとのコミュニケーションを円滑にするビサヤ語でした。たった4つのビサヤ語と1つのポイントだけですが、日本でも外国人が「こんにちは」や「ありがとう」などのちょっとした日本語でも話してくれると驚きと喜びがありますよね。英語やタガログ語とは違ったセブ州ならではの彼らの文化を尊重することで、現地のスタッフとよりよい関係を築くことができるかもしれませんね。

(Emi)