2019年5月1日、日本は歴史的な日を迎えました。新天皇の即位に伴って元号が平成から令和へと変わり、日本中が令和誕生の祝賀ムードに包まれました。海外でも日本の天皇の譲位は注目されており、世界的なニュース番組であるBBCやCNNなどでも皇居中継と共に日本の様子が放送されていました。

日系BPO企業が多数進出しており、WEB制作や英語サポートなどIT アウトソーシングを請け負っている当社のオフショア拠点があるフィリピンでも、国内向けのニュース番組で新天皇即位に関するニュースが放送されていました。また、特に英会話学校事業が盛んなセブでは、令和のお祝いに乗じた料金割引キャンペーンや、その他お得な情報もたくさん飛び交っていました。恐らくフィリピンだけではなく、世界中の日本人が新時代の幕開けを各々楽しんだかと思います。

では現地のフィリピン人たちは、日本の令和や天皇の譲位をどのようにみているのでしょうか。

何人か知り合いのフィリピン人に聞いてみたところ、元号が変わることの認知度はそれなりに高く、新天皇が即位することや、それに併せて日本では10連休があることなども知られていました。これらは恐らく在住日本人の多さや日本文化の受け入れ具合等、日本との距離の近さが影響しているかと思われます。また、フィリピン内での富裕層の増加や、訪日のニーズが高まったことによる日本の観光ビザ取得の容易化等により、日本を訪れるフィリピン人観光客も増加しています。そういった人々が日本の状況やニュースに関心を持っていることも原因の一つでしょう。実際、昨年2018年度の訪日フィリピン人の数は50万人を超え、国別訪日外国人客では8位とトップ10入りしています(出典「日本政府観光局(JNTO)」)。実は、フィリピン最大の日刊紙であるInquire紙の記者意見欄でも、令和についての意見の中で、日本へのフィリピン人観光客の増加とそれに対する日本の対応について書かれている部分があります。
(以下、https://opinion.inquirer.net/121086/dawn-of-the-reiwa-periodより引用)

『日本の査証制度の緩和に伴い、日本で働き、日本で学んでいる大量のフィリピン人に加え、より多くのフィリピン人観光客が京都の寺院や、富士山へと群れをなしている。』
『最終的に、日本はより多くの移民に対してその間口を広げなければならなくなる。そしてその動きは、周知の事実となってしまった日本の厳しい労働文化(及び、外人に対する不快な態度)について、再び考え直す必要が生じるであろう。』

たしかに、FacebookやInstagramなどのSNSでは、日本を訪れているフィリピン人の投稿をよく見かけます。私の友人のフィリピン人夫婦も今年5月に日本を訪れ、渋谷の交差点で東京のスピード感を体感し、富士山で日本の自然に触れ、バラエティーあふれる日本食に舌鼓を打っていました。

そして、日本国内でも度々耳にする“入管法改正”“特定技能ビザ”“外国人材”といったキーワード。労働力不足が懸念されている介護業や農業、漁業などに対する外国人の労働ビザが今年4月に解禁され、いよいよ日本での外国人就労者が本格的に増加していくこととなります。

もともと出稼ぎ文化が強く根付いているフィリピンでは、約230万人が海外で働いており、彼らが自国の家族に仕送りする金額はフィリピンのGDPの10%を占めているというのは有名な話です。その出稼ぎ先としては中東の国が多く、2017年のフィリピン統計局の資料ではトップのサウジアラビアにつづき、アラブ首長国連邦、クェートがトップ3となります。アジアでは、シンガポールがトップですが、実は日本も就労先のトップ10にランクインしています。4月に日本の特定技能ビザが解禁され、フィリピンの首都であるマニラで介護職を対象とした特定技能の試験が開催されたこと、試験の受付開始日当日で定員に達したことなどをみると、訪日フィリピン人の数は留学生、就労者ともに右肩上がりとなっていくことでしょう。

そしてまさに記者意見にあるように、改善すべき課題の一つが日本国内での外国人への偏見や差別。小売店で働く外国人に対し、接客に問題がない語学力であると判断されたからこそ採用されたはずなのに「言っていることが分からない」と差別混じりでお客から厳しく指摘されたり、飲食店への入店を「外国人お断り」と拒否されたりといったニュースをみたことがあります。ニュースだけでは一部の事実しか知ることができないため、それが本当に差別であったのか、そうなってしまった背景や原因は分かりかねます。しかし、これからは一部の労働力を外国人に頼ることになり、彼らは日本経済を支えてくれる貴重な人材となります。そして来たる東京オリンピックも考慮すると、こういった差別や偏見、または誤解が生じるような出来事は少なくなるよう互いに努力すべきことはあるかと思います。

フィリピンで生活していると、現地の人からよく「日本は良い国だけど、ストレスが多く自殺者が多い」「日本人はハードワーカー」「日本は家族より仕事が大切」など日本のストイックさについてコメントされることがあります。家族や親戚を何よりも大切にし、時間に追われることなくマイペースな文化で生きるフィリピン人。「時は金なり」と無駄な時間を嫌い、家族のために、自己成長のためにと仕事に打ち込む日本人。違った文化で育った人が共に働けば、大小さまざまな問題が発生することは必然ともいえます。

これまでの外国人を受容していた平成の時代から、共生していく令和の時代へ。日本はもちろん、フィリピンを含めた諸外国とも心を寄せ合い、調和しながら新しい令和の文化を築いていけるといいですね。

(Emi)